犯罪者、幻夏に続く、シリーズ作品「天上の葦」を紹介するぞ。
おお、社会派ミステリをテーマに扱ったシリーズ作品ですね。
今回のテーマも深いぞ。これは是非読んでからテーマを感じ取って欲しい。
珍しく、勿体ぶった言い方をしますね。
この大長編に一体どんなテーマが隠されているのか……。
概要
上巻
興信所を営む鑓水と修司のもとに不可解な依頼が舞い込む。渋谷のスクランブル交差点で、空を指さして絶命した老人が最期に見ていたものは何か、それを突き止めれば1000万円の報酬を支払うというのだ。一方、老人が死んだ日、1人の公安警察官が忽然と姿を消す。停職中の刑事・相馬は彼の捜索を非公式に命じられるが―。2つの事件の先には、社会を一変させる犯罪が仕組まれていた!?サスペンス・ミステリ巨編!(「BOOK」データベースより)
下巻
失踪した公安警察官を追って、鑓水、修司、相馬の3人が辿り着いたのは瀬戸内海の小島だった。そこでは、渋谷で老人が絶命した瞬間から、思いもよらないかたちで大きな歯車が回り始めていた。誰が敵で誰が味方なのか。あの日、この島で何が起こったのか。穏やかな島の営みの裏に隠された巧妙なトリックを暴いた時、あまりに痛ましい真実の扉が開かれる。すべての思いを引き受け、鑓水たちは巨大な敵に立ち向かう!(「BOOK」データベースより)
個人的ポイント
登 場 人 物 : 本当に必要最低限。人物も覚えやすい。
文 章 力 : 読みやすいが、やや改行が少な目。
テ ー マ : 上巻ではテーマは分からず仕舞い。是非下巻まで読んで欲しい。
ト リ ッ ク : 動機に震える作品。こんなに深い動機があったとは……。
後 読 感 : 虚脱感が強かったです。壮大な物語に圧倒されました。
上下巻合わせて、1000ページ近い大長編!
しかし、読み応えは抜群で、夢中になること請け合いの作品だぞ!
感想
上巻
上巻を読んでいて、「この本は一体何を訴えたいのだろうか?」と思いながら読んでいました。
この作者はテーマを深く作り込んでいる社会派ミステリを得意として、日本だからこそ書ける作品を書いているのが、特徴なのにそのテーマが中々現れない感じでした。
そのためか、上巻はちょっとスピードダウン。ひたすら渋谷のスクランブル交差点で亡くなった、老人の人間関係を探っていくという感じでした。
とはいえ、老人が死の間際に行った行動を探る依頼を受けた、鑓水と修司。
そして謎の失踪を遂げた公安の行方を追う相馬の事件が、互いに関係しあっていくのは面白い。小さな接点から、どんどん話が大きくなっていき、ますます謎は深まっていき、どんな展開をみせるのかワクワクしながら読みました。
この3人が集まると不思議と安心するんですよね(笑) この3人なら、なんとかしてくれる、って信頼があって、彼らが起こす行動が楽しみになっていくばかり。それに単純な会話ややりとりも面白い。
ようやく、核心に近づいたところで、物語は下巻へ……。
早く次が読みたい!
下巻
あっという間の下巻でした。500ページ近くあった筈なのに、ページ数なんて気にならないくらい、ぐいぐいと読まさせて頂きました。
渋谷のスクランブル交差点で亡くなった老人と失踪した公安の手掛かりを得るために、3人は瀬戸内海の小島へ。ここに手掛かりをもった「白狐」がいる筈。
中々「白狐」に辿り着かないのだが、パズルのピースは徐々に集まっていき、老人の死の直前の行動も朧げに見えてきた頃、物語は猛スピードで動き始める。
タイムリミットはどんどん近づき、警察からも追われ、島民からも敵視される。徐々に包囲網が近づく中、ようやく「白狐」の正体が判明する。論理的に「白狐」の正体に迫っていくのが、何とも自分好み(笑)
「白狐」の正体と同時に、スクランブル交差点で亡くなった老人――正光――が抱えていた葛藤や決意も明らかになり、とうとう作品のテーマも浮彫になって、ますますページを捲る手が止まりませんでした。
この作品のテーマは、やっぱり自分で読んでこそ、刺さる。
何故、公安の刑事は失踪したのか? 老人たちが胸に抱える思いは? これからの日本へ向けて彼らは何を伝えようとしているのか?
我々、読者が受け取らなくてはいけないメッセージは何なのか?
すべてがこの物語に詰まっています。
天を指した行動によって、色んな人々の心を動かす。
それは、登場人物たちでもあり、我々読者もそうかもしれませんね。
こんな人におススメです
・老人の指した先を知りたい人。
・現代の日本に訴える社会派ミステリを読みたい人。
・犯罪者、幻夏を読んだ人。
・重厚で時間を忘れて読めるミステリを読みたい人。