今日は「蟻の菜園」というミステリ小説を紹介するぞ。
確か、社会派ミステリの女流作家でしたね。
今回はヒューマンドラマがメインだな。
どうしてこんな事件が起きたのか? と謎に迫る。
鉄壁のアリバイを持つ、女性が本当に犯人なんでしょうか?
概要
結婚詐欺容疑で介護士の円藤冬香が逮捕された。婚活サイトで彼女と知り合った複数の男性が相次いで死亡していたのだ。しかし冬香は容疑を否認。アリバイも完璧だった。美貌の冬香の身にいったい何があったのか。関心を抱いたフリーライターの今林由美が冬香の過去を追い北陸に向かうと、30年前に起きたある未成年事件にたどり着く。由美は、父親を刺した少女と冬香との関連を疑うが、証拠がなく暗礁に乗り上げてしまう…。(「BOOK」データベースより)
個人的ポイント
登 場 人 物 : とても深みがあり、血が通っている人たちばかり。
文 章 力 : 読みやすくて、スイスイ読めました。
テ ー マ : 共依存。
ト リ ッ ク : トリックに至るまでの、壮絶な人生に圧倒です。
後 読 感 : どこで、どうすれば救えたのか。考えさせられる。
結婚詐欺に潜む殺人事件。
そして、その殺人に至った動機に深く切り込む作品だぞ。
感想
著者の特徴でもあるのですが、動機をとても大切にしています。
事件自体はとても単純。トリックもそこまで捻られたものでもない。でも、その奥に潜む動機は、誰も想像できないくらいに、深く、悲しい。そうやって人物を深堀していき、事件の本当の「真相」を暴いていく。
練炭自殺は実は、殺人だったのではないか? という疑惑から被害者は婚活サイトに登録しており、「冬香」という女性と付き合っていた。調べていくと、彼女の周りには不可解な死がまとわりついていた、というのがあらすじ。
この「冬香」に目をつけたのが、主人公の今林由美。フリーライターの彼女は、どうしてこんな美貌を持つ彼女がこんな結婚詐欺を行うのだろう、と疑問を抱き、彼女の人生について深く知りたい、と思う。
今林の調査は、正に「足で調べる」といった感じ。
地味ではありますが、文字通り「地に足がついた」調査方法なので、読者が置いていかれることもなく、今林と一緒に謎を追っているような感じでした。
そして、物語は章ごとに「今林の調査」と「冬香の人生」に別れて、両方とも感情移入出来ました。
作中では色んなテーマに触れていて、その都度、考えてしまう。
殺人は許されることではない、でも彼女を救う手は、必ずどこかにあった筈。もっと、彼女に差し出せる手があった筈。そして、彼女ももっと差し伸べた手を握るチャンスがあった筈だと思ってしまう。
作中でも「残りの90%の真実を明らかにしたい」という会話がありましたが、私達が普段目にしているニュースは、氷山の一角でしかなく、もっと深刻で、悲しい背景が孕んでいるのかもしれない、と思うと考えさせらます。
とても悲しく壮絶な人生でしたね……。
やるせない事件で、誰も悪くないように感じてしまいます。
こんな人におススメです
・柚月裕子のノンシリーズ作品を読みたい人。
・犯行の深い動機に興味がある人。
・2人の姉妹の壮絶な人生を追いたい人。
・集中して一気に作品を読みたい人。