シリーズの特徴と順番
元旧家の令嬢。市が管理する土地に無断で暮らす、瀬在丸紅子。
私立探偵と便利屋。正体は泥棒、保呂草潤平。
男性でありながら女装癖がある学生、小鳥遊練無。
女子学生で長身、ショートカットの男勝り、香具山紫子。
この4人が主人公を務めるVシリーズ。
ちなみにVとは瀬在丸紅子(Cezaimaru Venico)から取ったもの。
S&Mシリーズは、最新の機械や施設が登場してきて「THE・理系」という印象でしたが、今回紹介するVシリーズはそういったハイテク機器などはあまり登場しません。
むしろ、パーティー会場、避暑地、豪華客船、テレビ局などと何処かTVドラマを連想させる「レトロ」な場所ばかり。
トリックも派手ではなく、オーソドックスでシンプルな物が多い作品になっています。(意図してそうやって作っているとか……)
他にも、S&Mシリーズの西之園萌絵や犀川創平も登場するのも大きな特徴。
がっつりと物語に絡んでくる場合も多いので、S&Mシリーズを読んでいれば、より楽しめます。
そんなVシリーズですが、順番に読み進めたほうが物語の流れをより理解できます。
というか森博嗣の作品は順番通りに読んだ方がセオリーになってますね。
このシリーズの特徴としては、以下の通りです。
・レトロなミステリ小説を読みたい人。
・個性が濃いキャラクターたちの活躍を読みたい人。
・S&Mシリーズと同じ世界観。
・シンプルだけど地に足ついたトリックを楽しみたい人。
ひとつでも自分に興味がある項目があれば、是非とも読んでみては如何でしょうか?
シリーズの紹介
1.黒猫の三角
一年に一度決まったルールの元で起こる殺人。今年のターゲットなのか、六月六日、四十四歳になる小田原静江に脅迫めいた手紙が届いた。探偵・保呂草は依頼を受け「阿漕荘」に住む面々と桜鳴六画邸を監視するが、衆人環視の密室で静江は殺されてしまう。森博嗣の新境地を拓くVシリーズ第一作、待望の文庫化。
Vシリーズはじめの一冊。
主要メンバーたちの登場と決まった殺人事件がテーマになっているぞ。
豪邸で起きる殺人事件とルールに則った殺人事件……。
殺人犯の動機についても、考えさせられる作品になっています。
2.人形式モナリザ
蓼科に建つ私設博物館「人形の館」に常設されたステージで衆人環視の中、「乙女文楽」演者が謎の死を遂げた。二年前に不可解な死に方をした悪魔崇拝者。その未亡人が語る「神の白い手」。美しい避暑地で起こった白昼夢のような事件に瀬在丸紅子と保呂草潤平ら阿漕荘の面々が対峙する。大人気Vシリーズ第2弾。
今度は博物館で発生した殺人事件だ。
ちょっと登場人物が多いから、注意が必要だぞ。
ゾッとするような動機ですね……。
4人のメンバーが更に掘り下げられる一冊になっていますね。
3.月は幽咽のデバイス
薔薇屋敷あるいは月夜邸と呼ばれるその屋敷には、オオカミ男が出るという奇妙な噂があった。瀬在丸紅子たちが出席したパーティの最中、衣服も引き裂かれた凄惨な死体が、オーディオ・ルームで発見された。現場は内側から施錠された密室で、床一面に血が飛散していた。紅子が看破した事件の意外な真相とは。
事件は他殺なのか、事故なのか……。
そしてオオカミ男の正体は一体誰なのか?
トリックに驚愕です!
かなり大胆なトリックで驚く人も多いのでは?
4.夢・出逢い・魔性
20年前に死んだ恋人の夢に怯えていたN放送プロデューサが殺害された。犯行時響いた炸裂音は一つ、だが遺体には二つの弾痕。番組出演のためテレビ局にいた小鳥遊練無は、事件の核心に位置するアイドルの少女と行方不明に…。繊細な心の揺らぎと、瀬在丸紅子の論理的な推理が際立つ、Vシリーズ第4作。
今回は小鳥遊練無が活躍する一冊になっているぞ。
彼の女性癖がこんな結末をもたらすとは……。
東京のテレビ番組に出演って面白い展開ですね。
犯人の独白が挿入されているのが特徴的でもありますね。
5.魔剣天翔
アクロバット飛行中の二人乗り航空機。高空に浮ぶその完全密室で起こった殺人。エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣をめぐって、会場を訪れた保呂草と無料招待券につられた阿漕荘の面々は不可思議な事件に巻き込まれてしまう。悲劇の宝剣と最高難度の密室トリックの謎を瀬在丸紅子が鮮やかに触き明かす。
アクロバット飛行中で起きた密室殺人事件。
かなり私好みの展開であるが、一体結末はどうなることやら。
人間関係が複雑に絡み合う一冊でもありました。
切ない結末になっていて、Vシリーズで好きな人も多い一冊です。
6.恋恋蓮歩の演習
世界一周中の豪華客船ヒミコ号に持ち込まれた天才画家・関根朔太の自画像を巡る陰謀。仕事のためその客船に乗り込んだ保呂草と紫子、無賃乗船した紅子と練無は、完全密室たる航海中の船内で男性客の奇妙な消失事件に遭遇する。交錯する謎、ロマンティックな罠、スリリングに深まるVシリーズ長編第6作。
物語の舞台が豪華客船とは何ともロマンがある。
その豪華客船での密室殺人事件とは。保呂草の評価がグッと上がる一冊だぞ。
この話も人間模様がより深くなってきていますね。
最後のシーンに胸を奪われる人も多いんじゃないでしょうか。
7.六人の超音波科学者
土井超音波研究所、山中深くに位置し橋によってのみ外界と接する、隔絶された場所。所内で開かれたパーティに紅子と阿漕荘の面々が出席中、死体が発見される。爆破予告を警察に送った何者かは橋を爆破、現場は完全な陸の孤島と化す。真相究明に乗り出す紅子の怜悧な論理。美しいロジック溢れる推理長編。
研究所に繋がる一本の橋が爆破されて陸の孤島となってしまう。
そして研究所には首なし死体が……。かなり惹かれる物語だ。
紅子さんの推理が冴えわたる一冊ですね。
ちょっとS&Mシリーズを想起させる作品になっていますね。
8.捩れ屋敷の利鈍
エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣が眠る“メビウスの帯”構造の巨大なオブジェの捩れ屋敷。密室状態の建物内部で死体が発見され、宝剣も消えた。そして発見される第二の死体。屋敷に招待されていた保呂草潤平と西之園萌絵が、事件の真相に至る。S&MシリーズとVシリーズがリンクする密室ミステリィ。
S&Mシリーズから西之園萌絵ががっつりと登場してくるぞ。
その分、今作は保呂草以外のメンバー登場が少ないが……。
萌絵ちゃんと保呂草さんとのやりとりが新鮮ですね。
二人の対決に目を離すことが出来ない一冊になっていますね。
9.朽ちる散る落ちる
土井超音波研究所の地下に隠された謎の施設。絶対に出入り不可能な地下密室で奇妙な状態の死体が発見された。一方、数学者・小田原の示唆により紅子は周防教授に会う。彼は、地球に帰還した有人衛星の乗組員全員が殺されていたと語った。空前の地下密室と前代未聞の宇宙密室の秘密を暴くVシリーズ第9作。
何と前々作の「六人の超音波科学者」の隠れた研究施設が舞台。
再び同じ施設を使うなんて中々あい趣で、私は好きだぞ。
シリーズの最期に向かって不穏な空気が立ち込めていますね……。
密室状態だった部屋から素性不明の謎の死体とは、穏やかじゃないですね。
10.赤緑黒白
鮮やかな赤に塗装された死体が、深夜マンションの駐車場で発見された。死んでいた男は、赤井。彼の恋人だったという女性が「犯人が誰かは、わかっている。それを証明して欲しい」と保呂草に依頼する。そして発生した第二の事件では、死者は緑色に塗られていた。シリーズ完結編にして、新たなる始動を告げる傑作。
遂にVシリーズも完結してしまった……。
初期から引かれていた伏線がここに来て一気に回収されるぞ。
何とも驚愕な物語。
完結作だけあって、少し寂しい気持ちになってしまいますね。
最後に
S&Mシリーズお同じ世界観を共有していて、S&Mのキャラが登場すると、「お」と嬉しくなりますよね。
あまり、S&Mシリーズの共通性を見いだせず、シリーズを通した「違和感」を感じると思いますが、それらの疑問は第10作品の「赤緑黒白」を読むことにより、氷解することになります。これには度肝を抜かれること間違いなしです。
因みに私が一番好きな作品は「六人の超音波科学者」になっています(^^)/
