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【心とは記憶なのか?】〝失われた過去と未来の犯罪〟小林 泰三―――10分しか記憶が持たない世界


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今回はちょっと変わった長編「失われた過去と未来の犯罪」を紹介するぞ。

タイトルからして、SFっぽい作品ですね。

その通りだ。
しかし、普通のSFとは違う。「心とは何か?」と問う作品でもあるんだ。

おお、何か難しそうですが、面白そうな作品ですね!

概要

 

女子高生の梨乃はある日、記憶が短時間で消えてしまうことに気付く。この現象は全世界で発生し人類はパニックに陥った―。それから数十年。記憶する能力を失った人類は、外部記憶装置なしでは生きられなくなっていた。記憶=心が切り離せるようになった世界で「わたし」は何人分もの奇妙な人生を経験する。これは本当に自分の記憶?「わたし」は一体、何者なのか…?『アリス殺し』の鬼才が贈る、予測不能のブラックSFミステリ。(「BOOK」データベースより)

 

個人的ポイント

 

登 場 人 物 : 短編のような形式をとっているのでやや多め。

文   章   力  : 読みやすくすいすいと進められます。

テ   ー   マ    : 心とは。記憶とは。

ト リ ッ ク : ミステリ要素は薄め。

後   読   感  : いつか起きてもおかしくない未来。考えさせられる。

 

突如、記憶が10分した保つことが出来なくなった世界。
この世界で人は本当の「心」や「魂」を知ることができるのか?

 

感想

 

小林泰三が手掛けるブラック溢れるSFミステリ。

第1部と第2部の構成になっていて、第1部では、いきなり10分しか記憶が保たれなくなった人たちの混乱やパニックを描いています。

第2部では「メモリ」というアイテムが登場して、この「メモリ」により記憶が保持できるようになる。この「メモリ」を巡って人の「心」や「記憶」について、問いかけてきます。

一応、長編の形はとっているものの、第2部は短編のような形になっています。

「メモリ」が事故で入れ替わってしまた者。

替え玉受験のため「メモリ」を故意に入れ替える者。

不慮の事故で家族の間で「メモリ」が 入れ替わってそれぞれの人生を歩む者。

あえて「メモリ」を使わず、記憶を保持せずに生きていく者。

巫女として、死者の「メモリ」を使い遺された遺族と時間を共にする者。

……と。さまざまな、生き方、人生をこの本を読んで垣間見ることが出来ます。しつこいようですが、どの話も真剣に「記憶」とは何か? 「心」とは何だ? と問いかけてきて深く考えさせらせます。

例えば、自分の大切な人の姿形は全く同じなのに、中身が全くの別人だったら?

姿形は全く違う。性別さえも違う。でも、記憶(中身)は同じ人がいたら?

変わらず私はその人を受け入れることができるか? 愛することが出来るだろうか?

もしかしたら近い未来こういった「メモリ」が登場するかもしれない。そう思うととてもただの小説として読み終えることが出来ませんでした。

 

2020年11月23日(月)に小林 泰三さんが癌によりお亡くなりになりました。

謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 

何とも考えさせられる作品ですね……。
もしかしたら、近未来に同じような機械が出来るかも……。

 

こんな人におススメです

 

・SFミステリを読みたい人。

・記憶が保持できなくなった人たちの生活を読みたい人。

・長編なのに短編形式になっている物語を読みたい人。

・記憶とは、心とは何かを問う作品を読みたい人。