あの巨匠、江戸川乱歩の作品を現代風にアレンジした短編集だ。
それがこの「Dの殺人事件……」ですか。
確かに江戸川乱歩作品って短編が多いのでアレンジしやすいかも?
現代のスマホやAIなど近代機器をふんだんに盛り込んだ作品集だぞ。
一体どんな風に化けるのか、気になりますね……。
概要
長崎港を訪れた「私」は、ビデオ通話で恋人に風景を見せながら旅する奇妙な男と出会う。男に誘われた路面電車での観光の車中、「私」はその恋人が、人気アイドルのヴィーナスだと明かされる。だが、2人の馴れ初めを語る男の話には、明らかにおかしな点があり…(「スマホと旅する男」)。本格ミステリ界随一の騙しの達人が、江戸川乱歩の名作群を最先端テクノロジーでアップデートした、驚愕の翻案ミステリ短編集!(「BOOK」データベースより)
個人的ポイント
登 場 人 物 : 短編により共通の人物は登場せず。
文 章 力 : 歌野晶午の文章。読みやすく、若者言葉も盛り込まれている。
テ ー マ : 江戸川乱歩のオマージュ。
ト リ ッ ク : どれも現代でないと成り立たないモノばかり。
後 読 感 : 乱歩を踏襲しているのか、後味が悪い作品ばかり。
久しぶりに乱歩の作品を思い出したぞ。
どの作品もアレンジが効いていて、ワクワクしながら読める。
感想
江戸川乱歩といえば日本を代表する作家。
日本でこの名前を知らない人はいないのでは?(今の若い子は一体どうだろう?)
そんな乱歩の作品をオマージュして現代風に落とし込んだらどうなるのか? という意欲的な作品です。作中には現代機器がふんだんに登場して、どこか乱歩の面影を残しながらも、斬新な切り口で物語を彩っていまいした。
ちなみに私は乱歩の作品では「人間椅子」が好きです。あの狂気に満ちた動機や執念には脱帽するばかりで、物語の構成もさることながら、初めて読んだときの衝撃は今も忘れられません。
そんな「人間椅子」をアレンジした作品があるだけで、私にとっては充分に読む価値がある一冊でした。「椅子?人間!」で、あの乱歩のどこか禍々しくも幻想的な雰囲気を思い出しました。
一番好きな作品は「陰獣」をアレンジした「陰獣幻戯」でした。
歌野晶午と江戸川乱歩の相性がバッチリ合ったといっても過言ではないのでは? と思える出来栄え。陰湿さが際立っていて、物語全体がとても引き締まっているように感じました。
7つの短編集を読み、いろんな乱歩の作品を思い出して、また 読んでみたいなと思える作品でした。
エログロの乱歩作品をこんな風にアレンジするとは。
江戸川乱歩の作品を再読する良い機会になりますね。
こんな人におススメです
・江戸川乱歩の作品が好きな人。
・現代風にアレンジされた乱歩作品を読みたい人。
・サクッと通勤、通学中に短編集を読みたい人。
・どこかおどろおどろしい短編集を読みたい人。