京極夏彦の「厭な小説」を紹介するぞ。
「いや」と読むんですか?
その通り。
タイトル通りどれも胸糞が悪くなるような厭な物語が収録されているぞ。
なんでそんな小説を読むんですか……。
概要
「厭だ。厭だ。厭だ―」同期深谷の呪詛のような繰り言。パワハラ部長亀井に対する愚痴を聞かされ、うんざりして帰宅した“私”を出迎えたのは、見知らぬ子供だった。巨大な顔。山羊のような瞳。左右に離れた眼。見るからに不気味な子供がなぜ?しかし、妻は自分たち以外に家には誰もいないと言う。幻覚か?だが、それが悪夢の日々の始まりだった。一読、後悔必至の怪作。(「BOOK」データベースより)
個人的ポイント
登 場 人 物 : まともな主人公が「厭」を際立てている。
文 章 力 : 読みやすくも、嫌な気分になる文章。
テ ー マ : タイトル通り「厭」
後 読 感 : 本当に厭。後味最悪の物語でした……。
どの短編も本当に「厭」になるような物語。
読んでいて辛くなって、途中で止めようと思ったこともしばしば。
感想
本っっっ当に、厭な気分にしてくれる小説。
改行も多く、台詞も割と多く、文章はとても読みやすい。にも関わらず、欝々とした物語の所為で中々読み進めない。
読んでいて、どんどん厭な気持ちが膨れ上がっていき、後読感も最悪。これじゃあ読み進められないのも納得ですよね。どの物語も全く救いがない。
物語はどれも独立していますが、深谷という脇役が共通して登場します。
一番初めの話は「厭な子供」。実はこの話って「世にも奇妙な物語」で映像化されているんですよね。家に見慣れない子供が現れるのですが、その姿は嫌悪感が湧き出てくるような厭な子供。害はないのだけど、影からひょっこりと現れては家族たちを厭な気分にさせる。そしてどんどん精神を病んでいく……、といった感じです。
こんな感じの「厭な物語」が7つも収録されているんですよ?
そりゃ、読むペースも落ちますよ。
でも、面白い。
「次はどんな厭な話なんだろう」とまるで怖いもの見たさで読んでしまうんですよね。そんな中毒性がこの小説には宿っている気がします。
一番、「厭」だった話は「厭な彼女」でした。
自分が「ちょっと厭なこと」をその彼女は繰り返して行う。
カーテンの隙間が空いていたり、蛇口から水がぽたぽた落ちたり、トイレのタオルが床に落としたり、嫌いな食べ物を食卓に出したりと……。
ひとつひとつは、大した事が無いけれど、重なって、何回もこんなことをされれば、ストレスで爆発してしまいそうです。自分自身が潔癖症気味なので、主人公にとても感情移入することが出来ました。
こんなことを繰り返す彼女がいたら、殴り掛かってしまっても仕方がないかもしれない、と主人公に同情してしまう。大切な魚を殺して水槽に詰める彼女なんて、本当に厭だ。
別れさせてもくれないし、言葉は通じるけど理解してくれない。いくら暴力をふるっても出て行かない。延々と主人公の「厭な事」を繰り返す。これは発狂してしまいます……。
もし、自分がこんな目にあったら、と思うとゾッとせずにはいられません。
そして、最終話は深谷が主人公の物語。
今までの物語の総括でもありますが、今までの伏線を生かして、最後の最後まで厭な気分にさせてくれる。
この小説は気分が明るい時に読むのを推奨いたします。
何なんですかこの小説は……。
どういった目的で作者はこの本を書いたんでしょうか……。
こんな人におススメです
・後読感が最悪な「厭」な小説を読みたい人。
・世にも奇妙な物語が好きな人。
・嫌な気持ちになって、欝々と気分になりたい人(いるか?)
・サクッと読める7つの短編小説を読みたい人。