今回は「グリコ森永事件」をテーマにした作品「罪の声」を紹介するぞ。
「グリコ森永事件」?
一体、なんですかその事件は?
昭和を揺るがした、有名な未解決事件だ!
そんなことも知らないのか!
え……。
そんな事件があったなんて、知らなかったです。
概要
京都でテーラーを営む曽根俊也。自宅で見つけた古いカセットテープを再生すると、幼いころの自分の声が。それは日本を震撼させた脅迫事件に使われた男児の声と、まったく同じものだった。一方、大日新聞の記者、阿久津英士も、この未解決事件を追い始め―。圧倒的リアリティで衝撃の「真実」を捉えた傑作。(「BOOK」データベースより)
個人的ポイント
登 場 人 物 : やや多くて、覚えるのに手間取りました……。
文 章 力 : とても洗練された文章でした。
テ ー マ : 「罪」とどう向き合うか。
ト リ ッ ク : 動機や原因に焦点が充てられています。
後 読 感 : とても重厚な物語に脱力。映画も観ます!
未解決だった「グリコ森永事件」を扱った作品。
忠実に「グリコ森永事件」を再現していて、とても分かりやすい!
感想
2020年10月に映画化された今作品。
作中では「ギン萬事件」とされていますが、内容は「グリコ森永事件」そのもの。
「グリコ森永事件」の出来事を忠実に再現しています。
「グリコ森永事件」って何? という方はYoutubeやWikipedia、まとめサイトなどで予習しておくと、物語がすんなりと入っていく上に、より深く内容が理解できると思います。もちろん予備知識なしで読みたい、という人は何も知識を入れずに読むのも全然ありです。むしろ、先が読めない展開にワクワク出来ます。
恥ずかしながら、私は「グリコ森永事件」の世代ではないので、未解決事件というのは知っていたものの、細部までは知らず……。この小説を読んだことによって、初めて事件の概要を把握出来ました。
そして昭和史に残る未解決事件の「グリコ森永事件」を、作者の視点で一種の「解釈」を与えたのがこの「罪の声」です。
主人公は2名。
1名はテーラーを営む曽根俊也。
彼は父親の遺品から「ギン萬事件」に使用されたテープを発見し、自らの声というのを知り、父は「ギン萬事件」に関わっていた? と疑念を持って事件を調べる。
もう1人は記者の阿久津。
新聞記者の彼は、年末企画で未解決事件を担当することになり、渋々イギリスに飛ぶ。そこから徐々に事件と真摯に向かい合う自分を見つけていく。
……といった感じです。
ただ、「グリコ森永事件」をモデルにしただけではなく、ちゃんと「ギン萬事件」として物語を締め括っているのが面白かったです。
人と人が小さな輪で繋がる。その輪のひとつひとつがとても重い。
時間が経って口が軽くなるというのもあるけれど、それでも当事者たちにとって、思い出したくないこともある。
後半からは「子供が巻き込まれた犯罪」ということで、その巻き込まれた子供たちは今はどう過ごしているのか? 何を思っているのか? に焦点が当てられていて、彼らの人生に思いを馳せると居たたまれなかったです。
彼らには是非可能性ある「未来」を生きて欲しいです。
過去の事件にこんな秘密が隠されていたとは。
ちゃんと「罪」と向き合い、自らの「未来」とも向き合って欲しいです。
こんな人におススメです
・「グリコ森永事件」について詳しく知りたい人。
・映画を観て、小説も気になった人。
・重厚な社会派ミステリ小説を読みたい人。
・被害者や加害者の「罪」について、知りたい人。