綾辻行人の渾身の1200枚。「Another2001」を紹介するぞ!
1200枚!
ハードカバーで800ページありますね。
だが、あっという間に読めてしまう作品なので、ページ数は気にならないぞ。
2日で読み終えていましたもんね……。
概要
一大ムーブメントを起こした学園ホラー&ミステリ 新作が遂に刊行!
始まってしまった。
そんなはずは、なかった……のに、どうして。今年の〈もう一人〉は、誰――?
多くの犠牲者が出た1998年度の〈災厄〉から3年。
春から夜見北中三年三組の一員となる生徒たちの中には、3年前の夏、見崎鳴と出会った少年・想の姿があった。
〈死者〉がクラスにまぎれこむ〈現象〉に備えて、今年は特別な〈対策〉を講じる想たちだったが、ある出来事をきっかけに歯車が狂いはじめ、ついに惨劇の幕が開く!
相次ぐ理不尽な“死”の恐怖、そして深まりゆく謎。
〈夜見山現象〉史上最凶の〈災厄〉に、想と鳴はどう立ち向かうのか――!?綾辻行人が満を持して放つ、渾身の1200枚!
個人的ポイント
登 場 人 物 : 全然多くないのにびっくり。主要キャラは10名以下かも?
文 章 力 : 全体的に漂う、暗澹とした空気が作品とぴったし。
テ ー マ : ひとりの少年の記録でもある。
ト リ ッ ク : 〝災厄〟と〝死者〟、〝現象〟をとても綺麗に使ってました。
後 読 感 : もう大満足の一言。早く続編も読みたいです。
800ページあったのにあっという間に時間が過ぎていったぞ。
Anotherの正統続編ともあって、読み応えは抜群の一冊だった!
感想
とても、満足した一冊でした。
もう綾辻行人の新作、それもAnotherシリーズの最新刊となれば読まない理由はありません。発売日に書店に走って購入して、2日で読み終わりました。
もう全体を漂う雰囲気が抜群に良かったです。
どんよりとしていて、陰鬱としていて、「Another」が帰って来た。と、しみじみしてしまいました。夜見北中学校の〝現象〟もしっかりと描かれていて、また過去作品と違った恐怖が味わえます。
過去作品の登場人物も、登場してもう読んでいて、わくわくするし、うきうきするし、ぞくぞくするし、と感情が追いつきませんでした(笑)
意外なことにも今作は恋愛要素がやや多めに感じました。これも、ページを捲る手が止まらない要因のひとつです。
そして、ミステリ要素もある「Another」ですが、今作も充分にミステリ要素が含まれており、真相には驚愕の一言!
絶対にこんなの気付く筈がない、でもちゃんと伏線は張ってあって悔しい。爽快に気持ちよく騙されました。
こんな読書体験が再び出来るなんてとても贅沢な一冊ですよね。
ネタバレ注意!
ここからはAnother2001のネタバレ含まれます。
ネタバレを避けたい方は、今すぐページを閉じることを推奨致します。ここから自己責任で閲覧下さい。
過去作品は読んだ方がいい?
「Another」と「Another エピソードS」は是非とも読んでおいて欲しいです。
今作は「Another」の3年後が舞台。
主人公は「Another エピソードS」で登場した「想」です。そして、ヒロインの1人には「見崎鳴」も登場します。
想が「エピソードS」で体験してきた出来事も今作では重要な要素になっていますので、彼の心理描写などは、あらかじめ「エピソードS」を読んでいた方が、すんなりと彼の心理を掴むことが出来ます。
そして、前作の主人公である榊原恒一も登場します。
「Another」を読んでいると、すんなりと彼らの立場や関係、そして〝現象〟について理解することが出来ます。
というか、「Another」も「エピソードS」も充分に面白い作品なので、読まないと損です! 読んだ方が絶対に良いです!
夜見北中3年3組で起こる現象と対策とは
それは〝死者〟が紛れ込んでいる、ということ。
詳しい説明は、本編を確認して貰うとして――――。
3年3組にはひとり〝死者〟が紛れ込んでおり、クラスの人数が1名多いのです。
そのため、座席がひとつ足りない、という現象がまずあり、今年は〝ある年〟なんだという認識になるのです。
厄介なことに〝死者〟が誰か誰にも分からない。死者自身さえも。
そのように記憶が改変・改竄されてしまい、あたかも昔から存在したかのように、解釈されてしまうのです。
〝死者〟がクラスにいることにより、〝死〟が身近に迫り、クラスのメンバーや家族が死にやすくなってしまう、という正に疫病神みたいな存在なのです。
これを作中では〝災厄〟と呼びます。
そして、〝死者〟は過去の〝現象〟に巻き込まれて亡くなった人からランダムに選ばれるのです。
こうして、〝死者〟が紛れ込んでいる年にはある〝対策〟が打たれることになったのです。
クラスの1人を〝いないもの〟として、学校内では《無視》をすること。こうして、1人増えた死者とのバランスを保つことにより〝災厄〟を回避する。これが〝対策〟です。
今年の〝対策〟
万全を期すため、従来は〝いないもの〟を一名と設定していましたが、今回は〝いないもの〟を2名にしたのです。
これで、例えどちから一方が〝いないもの〟の重圧に耐えきれなくなって役割を放棄したとしても、もう1人が〝いないもの〟の役割を全うすれば大丈夫、という対策なのです。
そして、今回の〝いないもの〟の1人には主人公の比良塚想が自ら名乗りを挙げました。
ですが、もう1人の〝いないもの〟は耐え切れず、役割を放棄してしまう。でも「今回はもう1人がいるから大丈夫」と思っていたのも、つかの間。
なんと〝災厄〟が起こり始めてしまうのです……。どうして……。
〝死者〟は誰?
実は〝死者〟は簡単に分かります。
作品冒頭の「TuningⅡ」で書かれている1998年度の〝現象〟によって亡くなった死亡者一覧に堂々と書いてあります。
そして「Another」を読んでいれば、これも簡単に分かります。
「なんだ」「醍醐味がない」と思った方もいるかもしれませんが、これは作者の狙いのひとつだと思います。実際、私はまんまと作者の術中にハマってしまっていました。
まず、堂々と〝死者〟が誰かと明記することで、まるで生者として振る舞っている〝死者〟に対して、ぞくぞくとした恐怖を覚えます。
そして過去作品を読んでいる方については説明不要ですがこの〝現象〟を終わらせるには〝死者を死に還す〟必要があります。
つまり〝死者〟を殺す。
物語上、死者とは決別しなけばならいので、とても別れが切なくなります。何せ〝死者〟自身は自分が〝死者〟という認識がないので、逃げて、許しを請う訳ですから……。
そして、見崎鳴の〝人形の目〟を使って〝死者〟を死に還すことに成功するのです。
ここまでで、ページの3/5ぐらいは進んでいます。
止まらない〝現象〟
〝死者〟を還したのにも関わらず、〝災厄〟は続いていきます。
しかも、よりエスカレートしているように感じます。ここの描写が特に辛くもあるし、恐怖でもあります。
終わったと思った〝災厄〟が牙を向き、なんの罪のない人たちが次々と命を落としていく姿は、もう目を背けてたくもなります。
〝現象〟が発生している間は、覚悟というか心構えが出来ていた訳ですからね。それが終わったと思って、気を抜いていたら〝災厄〟が降りかかり、理不尽な死に怯えるのは、こちらまでも心的ダメージを受けました。
そうして〝災厄〟がまだ続いていると、改めて認識した、想と鳴は理由を探り、とある真相に辿り着くのですが……。
真相
どうして〝災厄〟が続くのか?
その真相には、やはり驚きの一言でした。
確かに伏線は張られており、ところどころ「ん?」と思った描写があったのですが、二重に驚きました……。
騙されまい、と注意して読んでいた筈なのに、予想の斜め上の「真相」で驚愕でした。
この「二重に驚く」の真意が知りたい方は是非とも読んでみて下さい。
絶対に満足がいく一冊となっています。
続編は?
あとがきを読む限り、続編の構想は元々あるそうです。
「エピソードS」を書いている途中に、本作のアイディアが浮かんだらしいのです。
ですが、作者自身は「次巻が最終話」と書いているので、そこが残念でなりません……。「エピソードS」のような番外編でもいいので、是非とも書いて欲しいですね。
しかし、まだAnotherの世界が続いてくれるのは、とても喜ばしい。
続編の刊行を気長に待っています。
なんて、壮大な物語だったんでしょう……。
青春要素も含んでいて、読み終えるのが勿体ない作品でもありました。
こんな人におススメです
・Anotherシリーズを読んでいる人。
・学園ホラーミステリを読みたい人。
・どっぷりと綾辻行人の世界観に浸りたい人。
・残酷無比に人が死んでいく描写に耐えられる人。