はじめに
今回は「後味が悪い推理小説」をご紹介致します。
後味が悪い作品には、妙な中毒性があります。
例えば……。
「犯人が自分の娘だった」
「真相が斜め上を行く、胸糞悪いものだった」
「登場人物が全員死んでしまう」
「正義が負けて、悪が勝ってしまう」
……などなど。
こういった後読感が悪い作品は読み終わった後は脱力して、何も考えられなくなりませんか? でももう一度そんな後読感を味わいたい、って気持ちになりませんか?
本当は「後味が悪い」と知らずに読んで、たっぷりと虚脱感を味わって欲しいのですが、なかなか後読感が悪いに巡り合うことって難しいですよね。
そんな「後味が悪い作品」を10冊、今回はご紹介したいと思います。
あくまでも、私主観の作品になりますので「別に後読感は普通だけど?」という感想を抱く方もいるかもしれませんが、ご了承ください。
1.神様ゲーム
神降市に勃発した連続猫殺し事件。芳雄憧れの同級生ミチルの愛猫も殺された。町が騒然とするなか、謎の転校生・鈴木太郎が犯人を瞬時に言い当てる。鈴木は自称「神様」で、世の中のことは全てお見通しだというのだ。鈴木の予言通り起こる殺人事件。芳雄は転校生を信じるべきか、疑うべきか。神様シリーズ第一作。
「後味が悪い」という作品で真っ先に思い付くのが本書。
恐ろしいのが、子供向けの「ミステリーランド」から刊行された作品ということだ。
本当に子供向けの作品って、正気を疑います。
こんな残酷で救いの無い作品を子供が読んだら……。泣き出してしまうんじゃないでしょうか。
2.蛍
オカルトスポット探険サークルの学生六人は京都山間部の黒いレンガ屋敷ファイアフライ館に肝試しに来た。ここは十年前、作曲家の加賀螢司が演奏家六人を殺した場所だ。そして半年前、一人の女子メンバーが未逮捕の殺人鬼ジョージに惨殺されている。そんな中での四日間の合宿。ふざけ合う仲間たち。嵐の山荘での第一の殺人は、すぐに起こった。
またもや、麻耶雄嵩の作品。
クローズド・サークル×後味最悪の作品だ。真相は是非読んで確かめてくれ。
嵐の山荘で起きる連続殺人事件……。
しかし、麻耶雄嵩の作品が一筋縄でいくとは到底思えないですよね……。
3.隻眼の少女
山深き寒村で、大学生の種田静馬は、少女の首切り事件に巻き込まれる。犯人と疑われた静馬を見事な推理で救ったのは、隻眼の少女探偵・御陵みかげ。静馬はみかげとともに連続殺人事件を解決するが、18年後に再び惨劇が…。日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞した、超絶ミステリの決定版。
もはや麻耶雄嵩は「後味最悪作品」の第一人者なんじゃないか?。
しかし後味は悪いものの、推理小説として非常に高いレベルの作品になっているぞ。
日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞とは凄いですね……。
麻耶雄嵩がどんな後読感を仕掛けているか、非常に気になります。
4.天使の囀り
北島早苗は、ホスピスで終末期医療に携わる精神科医。恋人で作家の高梨は、病的な死恐怖症だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように、自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。アマゾンで、いったい何が起きたのか?高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか?前人未到の恐怖が、あなたを襲う。
ホラー小説は後味が悪い作品が多いが、この作品は別格なので紹介したぞ。
タイトルの「天使の囀り」という言葉が、こんな恐怖を与えるとは……。
な、なんと恐ろしい作品なんですか……。
最後の最後まで気の抜けない恐ろしさが確かにありました。
5.ボトルネック
亡くなった恋人を追悼するため東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われるように断崖から墜落した…はずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いで自宅へ戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。
米澤穂信の作品で「後味が悪い作品」は珍しい。
主人公が「生まれなかった」世界は、主人公にとってどう映るのか?
どんどんと絶望を主人公に叩きつけていく作品ですね……。
自分の存在意義を問われる、深い作品になっています。
6.噂
「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。
警察小説でありながら、都市伝説の真相を追っていく物語。
そして、衝撃の結末は読者を脱力させること間違いなしの一冊だ。
「レインマン」っていう都市伝説をテーマにしているんですね。
口裂け女や人面犬などの都市伝説が好きな人なら、ハマるかもしれません。
7.球形の季節
四つの高校が居並ぶ、東北のある町で奇妙な噂が広がった。「地歴研」のメンバーは、その出所を追跡調査する。やがて噂どおり、一人の女生徒が姿を消した。町なかでは金平糖のおまじないが流行り、生徒たちは新たな噂に身を震わせていた…。何かが起きていた。退屈な日常、管理された学校、眠った町。全てを裁こうとする超越的な力が、いま最後の噂を発信した!新鋭の学園モダンホラー。
この作品も「噂」をテーマにしている作品でもある。
ホラーファンタジーのような作風で、ゆったりとした街で「噂」が「現実」に。
学園が舞台な作品なんですね。
登場人物も多く、視点の移動もちょこちょこあって飽きることがないですね。
8.向日葵の咲かない夏
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。
道尾秀介の出世作でありながら、素晴らしい傑作。
小学生の夏休みを残酷な視点で描く作品になっているぞ
S君の姿がまさか○○になっているとは……。
相棒が○○になっている作品なんて例をみないのでは? そして衝撃の結末……。
9.殺人鬼フジコの衝動
一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして新たな人生を歩み始めた十一歳の少女。だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。「人生は、薔薇色のお菓子のよう」。呟きながら、またひとり彼女は殺す。何がいたいけな少女を伝説の殺人鬼にしてしまったのか?精緻に織り上げられた謎のタペストリ。最後の一行を読んだ時、あなたは著者が仕掛けたたくらみに戦慄し、その哀しみに慟哭する…。
女性のドロドロとした感情が渦巻く物語。
作品全体が常に胸糞悪い展開になっている「イヤミス」のひとつだ。
これは軽いうつ状態になりかねない本ですね……。
ただ、幸せを追い求めるひとりの女性が殺人鬼に変貌していく様子は戦慄です。
10.殺戮にいたる病
東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるシリアルキラーが出現した。くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇、平凡な中流家庭の孕む病理を鮮烈無比に抉る問題作!衝撃のミステリが新装版として再降臨!
かなり「グロイ」一冊。
読んでいて、思わず目を逸らしたり、本を閉じてしまうこともしばしばあると思う。
一種の歪んだ「愛」がテーマになっているのでしょうか。
三人の視点から描かれた今作は様々な葛藤があって面白かいです。
最後に
みなさまが読んだことがある作品があったでしょうか?
あくまでも私選となっておりますので、ご了承頂ければと思います。
どの作品も一癖も二癖もある灰汁が強い作品になっていると思います。
他にも後味が悪い衝撃的な作品がたくさん控えていますので、次回の更新をお待ち頂ければと思います。
