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【日本の介護問題】〝ロスト・ケア〟葉真中 顕―――介護と死刑制度に深く切り込んだ一冊


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介護問題をテーマに扱った「ロスト・ケア」を紹介していくぞ。

介護問題ですか……。
高齢化社会の日本にとっては重いテーマになりそうですね。

その通りだ。
この本を通じて、日本の格差を改めて実感した気分だよ。

読み始めるには、覚悟がいりそうですね……。

概要

 

戦後犯罪史に残る凶悪犯に降された死刑判決。その報を知ったとき、正義を信じる検察官・大友の耳の奥に響く痛ましい叫び―悔い改めろ!介護現場に溢れる悲鳴、社会システムがもたらす歪み、善悪の意味…。現代を生きる誰しもが逃れられないテーマに、圧倒的リアリティと緻密な構成力で迫る!全選考委員絶賛のもと放たれた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

 

個人的ポイント

 

登 場 人 物 : 最小限でいて、それでいてとても効果的な人物ばかり。

文   章   力  : 上手です。心を抉るような描写も。

テ   ー   マ    : 介護を通じて、日本の格差や死刑制度にも踏み込んでいる。

ト リ ッ ク : 犯人は予想できてしまうが、何よりもテーマに考えさせられる。

後   読   感  : これからの自分や日本について考えてしまう。

 

とても難しいテーマを扱っていて、読み応え抜群の作品。
これからの行く末を考えさせられる、とても重たい一冊だぞ。

 

感想

 

日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞してデビューしただけはある、とても重厚な一冊でした。

日本は高齢化社会の一途を辿っているのは、日本人なら誰でも知っていること。

高齢者の介護や年金、少子高齢化など抱える問題は多いですが、今作は主に「介護」に焦点を当てています。

誰もが、手厚い介護を受けられる訳ではない。そこには、必ず格差がある。

十分な貯蓄がある老人ならまるでホテルのような老人ホームに入居して、老後はまるで「天国」のような暮らしができることが出来て、介護する側の家族にとっても負担はぐっと減ることでしょう。

しかし、十分な貯蓄もなければ、頼れる人もいないのであれば、当人も介護する家族も「地獄」と化すのは、簡単に想像が付くでしょう。

今作はそんな「地獄」からの解放を目指した「犯人」の物語でもあります。

「天国」からの安全地帯から正論や綺麗事を言ったとしても、説得力がない。想像力が足りない。「諦めるな」という言葉は、本当に苦しんでいる人には響かないし、届かないのだ。

犯人のやった殺人は確かに許される物ではないかもしれない。

だけども、犯人の殺人に救われた人も大多数いるのは間違いない。自分の正義や、信念に基づいて行った殺人に彼は一変の悔いもないだろう。

家族は、かけがえのない存在ではあります。

家族という無条件な「絆」が確かにそこにはあります。

しかし、その「絆」はくるりと表情を変えて時には「呪い」へとなります。

自分だけではなく、家族を苦しめる呪いへと変貌し、家族を苦しめて壊していく。こういった問題が常に付きまとっているのです。

だからこそ、目を背けずにこの問題に真っ直ぐと取り組まなくてはいけないと思いました。

 

これは犯人を責めることが出来ない作品でもありますね……。
誰よりもこの事態を重く見ていたのは、犯人でもあったのですね。

 

こんな人におススメです

 

・社会派ミステリ小説を読みたい人。

・介護をテーマにしている作品を読みたい人。

・日本の根幹にある格差問題について読みたい人。

・日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作を読みたい人。