今回はドラマ化もされた作品「誰か―Somebody」を紹介するぞ。
宮部みゆきさんが書いた作品ですね。
うむ。
社会派ミステリとして評価がかなり高い作品になっているぞ。
それは楽しみですね。
一気読み必須の一冊なのでは?
概要
今多コンツェルン広報室の杉村三郎は、事故死した同社の運転手・梶田信夫の娘たちの相談を受ける。亡き父について本を書きたいという彼女らの思いにほだされ、一見普通な梶田の人生をたどり始めた三郎の前に、意外な情景が広がり始める―。稀代のストーリーテラーが丁寧に紡ぎだした、心揺るがすミステリー。(「BOOK」データベースより)
個人的ポイント
登 場 人 物 : 登場人物全員たちが息づいている。
文 章 力 : とても上手です。読みやすく、さくさく進みます。
テ ー マ : 過去の清算と未来に向けての一歩。
ト リ ッ ク : 緻密な伏線に唸りました。
後 読 感 : 賛否両論あるようですが、私は満足した終わり方。
400ページ以上ある作品だが、とてもスイスイと読めるぞ。
主人公たちの人間味溢れる描写は流石宮部みゆきの作品だ!
感想
読者を惹きつけるような、人物描写は流石の一言。
平凡なサラリーマンである杉村三郎をこれほどまで、魅力的に描くのは圧巻という他なかったです。
そもそも、ミステリ小説で「平凡なサラリーマン」を探偵役に置くというのが異色と呼べるのではないでしょうか。
平凡で、これといった取り柄もなく、家庭を持っていて、奥さんと娘に囲まれて幸せ。けれども、人並みに悩みも持っている。そんな等身大で、どこにでもいそうなサラリーマンだからこそ、我々の身近に感じて、共感するのではないでしょうか。
ちょっと手を伸ばせばそこにいそう、それが彼、杉村三郎の魅力なのではないでしょうか。
肝心な物語の内容は、決して劇的で衝撃的な展開が待っている訳ではありません。
亡き父の事故をきっかけに、父の人生を掘り下げ、本を出版しようと決める姉妹のサポートし、梶田信夫――亡き父――に潜む過去の謎を追う、というもの。そこには誘拐事件も絡んでいて……。
物語のテンポは凪いだ波のようで、淡々と進み、謎も一進一退という感じで中々核心に迫ることはない。
しかし、この物語の探偵役は「平凡なサラリーマン」です。名探偵ならあっという間に解決するかもしれませんが、この物語は、地の足が着いた調査が魅力的なのです。
そうやって、杉村三郎がコツコツと集めた情報――伏線――が後半になり回収されていくのが見事でした。まさか、あれが伏線だとは思いも寄らず。日常に隠れている小さな出来事がこんな伏線になっているとは。
そして、謎解きには人の「悪意」がとても苦しい。
丁寧に登場人物たちを描いているからこそ、ここまで胸が苦しくなるんでしょうね。
次回作もとても楽しみです。
とても身近に感じる存在ですね。
身近に感じる謎や人が、この小説の大きな魅力なんでしょうね。
こんな人におススメです
・平凡で等身大のサラリーマンが探偵役の作品を読みたい人。
・登場人物たちが丁寧に描かれている作品を読みたい人。
・濃厚で緻密なストーリーを読みたい人。
・ドラマを観た人、これから観てみたい人。