今回は三津田信三の「ついてくるもの」を紹介するぞ。
夏にぴったりのホラー小説だ。
う、表紙からして恐ろしいのですが……。
今作はいわゆる「本当にあった怖い話」のような体裁になっているぞ。
その分リアリティがあって、グッと恐怖が増す作品だ。
読む前からそんなに脅かさなくても……。
概要
実話怪談の姿をした七つの怪異譚が、あなたを戦慄の世界へ連れていく。薄気味の悪い男が語る夜毎の恐怖(「夢の家」)、廃屋から人形を持ち帰ってしまった私の身の上に次々と…(「ついてくるもの」)、同居人の部屋から聞こえる無気味な物音の正体は…(「ルームシェアの怪」)。“取り憑かれる”ホラー短編集。(「BOOK」データベースより)
個人的ポイント
登 場 人 物 : 語り手はひとりだけ。後は作品によってまちまち。
文 章 力 : 相変わらずとても上手でした。怖い。
テ ー マ : 体験談を模したホラー。
ト リ ッ ク : 実話を元に創られた、という体なので、とてもリアリティがある。
後 読 感 : 背筋がぞくりとするような作品ばかり。夏におススメです。
7つの短編はどれもバラエティ豊か。
異なる恐ろしさで我々読者を恐怖の底へ叩き落とすぞ!
感想
作者――三津田信三――が、友人知人などに実際に聞いた「恐ろしい体験談」を集めて7つの短編に仕上げたのが、今作品。
実話を元に創られた、っていう体裁だからどの作品もリアリティがあって「本当にあったんじゃないの?」と疑ってしまうような作品でした。
7つの作品はどれも趣が違っていて、どの作品もまったく別種の恐怖を味わえました。これはこれで、恐ろしいのと同時にお得でもありますよね(-ω-)/
・夢の家……交流会(合コン?)で知り合った女性に別れを告げてから夜な夜な見てしまう夢。自分の意識では制御できずに、彼女の家にどんどんと引き込まれていく、
・ついてくるもの……廃屋の庭先にあったお雛様を不憫に思って持ち帰ったら、家族の周りで不幸が相次ぎ……。そしてお雛様を何度も手放そうとしてもいつの間にか手元に戻ってきてしまう。
・ルームシェアの怪……4人で一軒家を借りて住んでいたのだが、肝試しをした日を境にある一室から不可解な気配が。
・祝儀絵……伯母から絵を貰った後に、婚約者と名乗る女性が主人公の周りに現れる。不可解なことにその女性の特徴を誰も言えず……。
・八幡藪知らず……小学生の主人公は、不気味な森へ友人たちと探検に行こうとするが、決行日に近づくにつれ、襤褸襤褸の手紙が投函されるようになってゆく。
・裏の家の子供……引っ越した家の裏に住む子供の騒音に苦しめられる主人公。直接文句を言おうと赴くのだが。家に住んでいた人物の謎とは。
・百物語憑け……三津田信三が「百物語」という企画を考えるが、深夜の三時に……。
特に好きだった話は、表題作の「ついてくるもの」と「ルームシェアの怪」でした。この二つが私は特に恐ろしかった:;(∩´﹏`∩);:
「ついてくるもの」はやっぱり、表題作とあってガツンとインパクトがありました。
読む前から、怪談なのだから「憑いてくるもの」ってタイトルの方がいいのでは? と思っていましたが、あえてひらがな表記にしていたのですねΣ(゚Д゚)
そして「ルームシェアの怪」ですが、予想を大きく裏切る真相!
いい意味で裏切られて、恐怖も倍増した気分でした(´;ω;`)
どの物語も恐ろしいものばかりです……。
暑苦しい夏にはぴったりですが、夜中に読むと眠れなくなるかも……。
こんな人におススメです
・ホラー短編集を読みたい人。
・実話を模して創られたホラー小説を読みたい人。
・解釈や推理のない不可解なホラー小説を読みたい人。
・三津田信三の作品が好きな人。