シリーズの特徴と順番
覆面作家としてデビューした北村薫先生のデビュー作品が「空飛ぶ馬」。
この「空飛ぶ馬」がミステリ界に衝撃を与える作品となりました。
女子大生の「私」が主役で、自らの身の回りで起こった疑問や謎を落語家・「春桜亭円紫」に相談して、円紫さんは解決し、時には「私」にヒントを与えて解決に導く、というのが基本的な流れ。
とても優しくて、温かい物語ばかりです。
今となっては、珍しくもなんともない「日常の謎」
その元祖がこの「空飛ぶ馬」と呼ばれています。
更には、覆面作家とデビューしたため、当時作者は、その綺麗な文章や女性特有の描写などから女性ではないか? いや女子大生が書いた本ではないか? と憶測が飛び交いました。
当時はかなり話題性たっぷりの本でした。
そんなこのシリーズは、順番通りに読んで欲しいシリーズです。
この作品は「私」の成長物語でもありますので、是非とも最初から読んで、「私」の成長を見守り、時には応援し、そして一緒に成長できる物語なのです。
このシリーズの特徴としては、以下の通りです。
・日常の謎を取り扱っている。
・主人公の『私』が成長する物語でもある。
・高水準の文章と人間ドラマを楽しめる。
・文学作品とミステリの融合。
ひとつでも自分に興味がある項目があれば、是非とも読んでみては如何でしょうか?
シリーズの紹介
1.空飛ぶ馬
女子大生と円紫師匠の名コンビここに始まる。爽快な論理展開の妙と心暖まる物語。
北村薫のデビュー作品!
今ではすっかり有名になった『日常の謎』の始まりと言われる作品だぞ。
刊行は1989年。
この頃から、日常の謎と呼ばれる作品が現れたんですね……。
2.夜の蝉
呼吸するように本を読む主人公の「私」を取り巻く女性たち―ふたりの友人、姉―を核に、ふと顔を覗かせた不可思議な事どもの内面にたゆたう論理性をすくいとって見せてくれる錦繍の三編。色あざやかに紡ぎ出された人間模様に綾なす巧妙な伏線が読後の爽快感を誘う。第四十四回日本推理作家協会賞を受賞し、覆面作家だった著者が素顔を公開するきっかけとなった第二作品集。
円紫さんの推理が光るシリーズ弟2弾。
「私」がまた成長していく、青春小説でもあるぞ。
日本推理作家協会賞を受賞している作品でもあるんですね。
ちょっと、ゾクッと人の怖さが垣間見る作品ですね。
3.秋の花
絵に描いたような幼なじみの真理子と利恵を苛酷な運命が待ち受けていた。ひとりが召され、ひとりは抜け殻と化したように憔悴の度を加えていく。文化祭準備中の事故と処理された女子高生の墜落死―親友を喪った傷心の利恵を案じ、ふたりの先輩である『私』は事件の核心に迫ろうとするが、疑心暗鬼を生ずるばかり。考えあぐねて円紫さんに打ち明けた日、利恵がいなくなった…。
『円紫さん』シリーズで初めての長編作品。
長編作品とあって、結構ずっしりくる作品だぞ。
薄い本なのに、何でこんなにも胸に響くんだ……。
人生の儚さだったり、生きる意味を教えてくれるような一冊です。
4.六の宮の姫君
最終学年を迎えた「私」は卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていく一方、田崎信全集の編集作業に追われる出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。「あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ」―王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、「私」の探偵が始まった…。
シリーズの番外編に位置している作品だぞ。
「私」が芥川龍之介の交友関係を探っていくぞ。
文学推理小説、って感じですね。
特に事件が起きる訳でもなく「私」の奮闘を応援したくなりますね!
5.朝霧
前作『六の宮の姫君』で着手した卒業論文を書き上げ、巣立ちの時を迎えたヒロインは、出版社の編集者として社会人生活のスタートを切る。新たな抒情詩を奏でていく中で、巡りあわせの妙に打たれ暫し呆然とする「私」。その様子に読み手は、従前の物語に織り込まれてきた糸の緊密さに陶然とする自分自身を見る想いがするだろう。幕切れの寥亮たる余韻は次作への橋を懸けずにはいない。
遂に「私」は学校を卒業して、社会人に。
ここまでくると感慨深いものがあるな。
大分成長してきた感じがありますね。
円紫さんも答えをポン、と出す訳ではなく導いていく形がまた魅力。
6.太宰治の辞書
大人になった“私”は、謎との出逢いを増やしてゆく。謎が自らの存在を声高に叫びはしなくても、冴えた感性は秘めやかな真実を見つけ出し、日々の営みに彩りを添えるのだ。編集者として仕事の場で、家庭人としての日常において、時に形のない謎を捉え、本をめぐる様々な想いを糧に生きる“私”。今日も本を読むことができた、円紫さんのおかげで本の旅が続けられる、と喜びながら
「私」が大人に成長し、一児の母親に……。
一気に成長したが、また「私」に会えるとは。
太宰治が使用していた辞書を探す話ですね。
円紫さんはちょっぴりしか登場しなかったですが、それは「私」の成長があってこそ。
最後に
実は、「朝霧」から「太宰治の辞書」まで17年の時間が空いていました。
だから「円紫さん」と「私」シリーズが刊行されると知った時、また「私」に会えるんだ、と喜ばしい気持ちになりました。
思わず「久しぶり」と声を掛けたくなるような、作品なんです。
登場人物全員が息づいている。この小説の中に確かに、生きて、考えて、生活している。耳をすませば、彼らの息遣いが聞こえてきそうな作品ばかりです。
日常の謎に興味ある人は是非とも読んでみて下さい。
とても優しい物語に胸打つこと必見です。
