シリーズの特徴と順番
この「タック&タカチシリーズ」ですが、非常に悩みましたが、順番に読む必要はない、ですけども、出来れば順番に読んで欲しい、作品です。
というのも、この「タック&タカチシリーズ」は出版社は別々だし、刊行順に読んでも時系列はあっちこっち飛ぶし、実際、この記事を書いていて頭が混乱しました。
作者自体も、細かい矛盾に頭を抱えているそうな。
時系列は下記の通りとなっています。
①彼女が死んだ夜
②麦酒の家の冒険
➂仔羊たちの聖夜
④スコッチ・ゲーム
⑤依存
⑥身代わり
⑦解体諸因
⑧謎亭論処
⑨黒の貴婦人
⑩悪魔を憐れむ
かなり刊行順と時系列がぐちゃぐちゃしていますね汗
ですが、内容はとても面白い作品になっています。
このシリーズは四国にある架空の「安槻市」を舞台に大学生の4人が様々な事件に遭遇し、解決するというのが主な流れ。
その4人が……。
タックこと匠 千暁。
タカチこと高瀬 千帆。
ボアン先輩こと辺見 祐輔。
ウサコこと羽迫 由起子。
この4人が主人公といっても過言ではないでしょう。
そして、この作品の魅力のひとつが「探偵役がバラバラである」ということ。
主な探偵役はタックやタカチですが、ちらほらとボアン先輩もウサコも謎を解く。だから今回は一体誰が探偵役なんだろう?と新鮮な気持ちで楽しめます。
そして、もう一つの魅力が「酩酊推理」です。
酒を飲みながら、駄弁って、論理をこねくり回し、事件を推理する、というパターンが非常に多い。いつしか「酩酊推理」と名づけられました。
会話で思考をあっちこっち飛ばして推理するのが面白い。
最後にこのシリーズには、あまりド派手なトリックはありません。
このシリーズはwhydunit(ホワイダニット)に力を入れています。
思わぬ犯行動機に毎回毎回、驚いてばかりです。
人間の汚い部分が動機に繋がっていることが多く、 暗い井戸を覗いたように、ぞくりとさせることもしばしばあります。
このシリーズの特徴としては、以下の通りです。
・登場人物たちが大学生から始まるので、青春小説の色合いが強い。
・殺人事件から日常の謎まで扱う幅が大きい。
・動機に重みを置いている作品が多い。
・お酒を飲み、駄弁りながら推理する「酩酊推理」。
ひとつでも自分に興味がある項目があれば、是非とも読んでみては如何でしょうか?
シリーズの紹介
1.解体諸因
六つの箱に分けられた男。七つの首が順繰りにすげ替えられた連続殺人。エレベーターで16秒間に解体されたOL。34個に切り刻まれた主婦。トリックのかぎりを尽くした九つのバラバラ殺人事件にニューヒーロー・匠千暁が挑む傑作短編集。新本格推理に大きな衝撃を与えた西沢ミステリー、待望の文庫化第一弾。
シリーズ一作目の作品だぞ。
短編集だが、すべて「バラバラ殺人」をテーマに扱っているぞ。
まだ登場人物のキャラクターが定まっていない感じですね。
それに主要人物たちが全員大学卒業後の話なんですね。
2.彼女が死んだ夜
門限六時。家が厳しい女子大生ハコちゃんはやっとアメリカ行きの許しを得た。出発前日、親の外出をいいことに同級生が開いた壮行会から深夜帰ると部屋に女の死体が!夜遊びがバレこれで渡米もふいだと焦った彼女は自分に気があるガンタに遺棄を強要する。翌日発見された遺体は身元不明。別の同級生も失踪して大事件に。匠千暁、最初の事件。
タックこと匠千暁が大学二回生の時に遭遇した初めての事件。
この作品から読み始めるのもいいかもしれないな。
コミカルな描写が多いので、肩の力を抜いて読めますね。
しかし、ハコちゃんはなんて悪女なんだ……。
3.麦酒の家の冒険
ドライブの途中、四人が迷い込んだ山荘には、一台のベッドと冷蔵庫しかなかった。冷蔵庫には、ヱビスのロング缶と凍ったジョッキ。ベットと96本のビール、13個のジョッキという不可解な遺留品の謎を酩酊しながら推理するうち、大事件の可能性に思い至るが…。ビール党に捧げる安楽椅子パズル・ミステリ。
これぞビールミステリ!。
全てのビール好きに勧めたい一冊になっているぞ。
ビールしかない家に迷い込んだ、って凄いですね。
このビールの家は何のために存在しているのか? と推理するんですね。
4.仔羊たちの聖夜
クリスマスイヴの夜、一人の女がマンション最上階から転落死した。偶然、現場に遭遇した匠と高瀬。状況は自殺だが結婚式を控えた彼女に動機はなかった。ならば殺人か?事件を調べる二人は五年前にも同じ場所での高校生の飛び降り自殺を知る。一年後、三たび事件が。今度は二人の親しい友人だった…。本格ミステリの醍醐味を味わえる傑作。
タックとタカチがメインで物語が進むぞ。
そして探偵役も変わるので、斬新な気持ちで読めるぞ。
後味が悪い作品でもありましたね……。
タック、タカチ、ボアン先輩、ウサコの四人組の出会いが語られるのもいいですね。
5.スコッチ・ゲーム
高校三年の冬、学園の女子寮に戻った高瀬千帆は、ルームメイトで同性の恋人・恵の惨死を知る。容疑者は恵と噂があった教師・惟道。だが彼は「酒の瓶を持って河原へ向かう男を尾行していた」と奇妙なアリバイを主張。二日後、隣室の生徒が殺される。再び惟道は同じアリバイを。二年後、匠千暁が千帆の郷里で事件を鮮やかに解く本格ミステリ。
今作はヒロインのタカチの過去が語られる重要な話だ。
むしろ、作品の殆どがタカチの話になっているぞ。
ボアン先輩とウサコはあまり登場しませんね……。
しかし、物語は凄く計算されつくされた印象を残します。
6.依存
安槻大に通う千暁ら仲間七人は白井教授宅に招かれ、そこで初めて教授が最近、長年連れ添った妻と離婚し、再婚したことを知る。新妻はまだ三十代で若々しく妖しい魅力をたたえていた。彼女を見て千暁は青ざめた。「あの人は、ぼくの実の母なんだ。ぼくには彼女に殺された双子の兄がいた」衝撃の告白で幕を開ける、容赦なき愛と欲望の犯罪劇。
今回は語り手がウサコの作品になっているぞ。
前作はタカチの過去の話だったけれど、今回はタックの過去が語られる。
「依存」というタイトルがピッタリの作品ですね。。
登場人物たちが大きく動いた感じがあります。
7.謎亭論処
呑むほどに酔うほどに冴える酩酊推理! 女子高の正門前に車を停め、夜の職員室に戻った辺見祐輔(へんみゆうすけ)は憧(あこが)れの美人教師の不審な挙動を垣間(かいま)見た。その直後、机上の答案用紙が、さらに車までがなくなった。ところが二つとも翌朝までに戻されていた。誰が、何のために? 辺見の親友であり、酒に酔うほど冴(さ)え渡る酩酊(めいてい)探偵・匠千暁(たくみちあき)に相談すると……。続発する奇妙な事件を、屈指の酒量で解く本格推理の快感!
バラエティに富んだ短編集で、飽きることない。
時系列もバラバラ、語り手もバラバラ、探偵役もバラバラの一冊。
何だが、色んなキャラクターの一面を垣間見た気がして、お得ですね。
4人が欠けて進む話もありましたが、ぼくは4人揃った方が好きです。
8.黒の貴婦人
飲み屋でいつも見かける“白の貴婦人”と、絶品の限定・鯖寿司との不思議な関係を大学の仲間四人組が推理した表題作。新入生が自宅で会を開き女子大生刺殺事件に巻き込まれる「招かれざる死者」。四人の女子合宿にただ一人、参加した男子が若者の心の暗部に迫る「スプリット・イメージ」ほか本格ミステリにしてほろ苦い青春小説、珠玉の短編集。
時系列がバラバラな5編が収録されている短編集。
まだ学生だった頃だったり、卒業後だったりするぞ。
卒業したタックが女学生4名と避暑地に行く話は、羨ましい限りですね。
まあ、お決まりで事件に巻き込まれてしまうんですが。
9.身代わり
ポルノまがいの小説『身代わり』を書いてトラブルを抱える成績優秀の美人女子高生が自宅で殺された。しかも現場には、一人の警察官の遺体が。一方、五日前の深夜、大学生が公園で女性を包丁で脅し暴行をしかけたが反撃され自分の腹部を刺して死亡。無関係に見えた二つの事件が高瀬千帆と匠千暁の名推理で交錯するとき、複雑な悪意の糸が解け出す。
今回はボアン先輩がメインの話だな。
長編作品でまだタックたちが学生の頃の話になっているぞ。
一見無関係に見える二つの殺人事件に謎が深まりますね……。
しかし、後味が悪い作品でもありますね……。
10.悪魔を憐れむ
「恩師が跳び降り自殺しないように見張ってほしい」と大学OBの居酒屋店主から頼まれた匠千暁は、現場で待機するも先生を死なせてしまう。老教師の死の理由を追い、真犯人から“悪魔の口上”を引き出す表題作。刑事の実家で二十三年間続く午前三時の心霊現象の謎と隠された真実を解く「無間呪縛」他、読み応えたっぷり、四つの珠玉ミステリ集。
今作は、タックたちが卒業してからの話だ。(ボアン先輩は留年中)
卒業してからの、彼らの近況が分かる短編集になっているぞ。
4話収録されていて、それぞれの主人公がタックとバディとなっていて面白いですね。
いつかは、4人が集結して事件を推理して欲しいですね!
最後に
少しでも「タック&タカチシリーズ」の魅力が伝わってくれればと思います。
現在は、10冊刊行されておりますが、まだまだ続くと思われます。
青春小説らしく、恋愛や登場人物たちの成長。学校や学生の雰囲気が息づいている。
人の醜い部分を引き抜いた、動機。
そして、酩酊推理。
この「タック&タカチシリーズ」を読めば、まるで酒に酔ったように中毒になること間違いないでしょう。
