この作品は考えさせられるな……。
にわとり助手よ。君の人生は充実しているかね?
へ? じゅ、充実ですか? う~ん。
この「6時間後に君は死ぬ」。タイトルからは想像できないくらい、優しいテーマになっているんだ。
自分の人生について、改めて考えるいい切っ掛けになったよ。
タイトルからは想像できませんね……。
一体どんな話なんだろう。
概要
6時間後の死を予言された美緒。他人の未来が見えるという青年・圭史の言葉は真実なのか。美緒は半信半疑のまま、殺人者を探し出そうとするが―刻一刻と迫る運命の瞬間。血も凍るサスペンスから心温まるファンタジーまで、稀代のストーリーテラーが卓抜したアイディアで描き出す、珠玉の連作ミステリー。(「BOOK」データベースより)
個人的ポイント
登 場 人 物 : すべて話の主人公は女性。女性の気持ち、幸せについてよく書けてる。
文 章 力 : 読みやすい。ページ数は多いが気にならない。
テ ー マ : 成功だけが、人生ではない。
ト リ ッ ク : 「未来予知」を上手に落とし込んでいる作品。
後 読 感 : 最後には胸が熱くなりました。
5編+エピローグが収録されている作品。
どの作品も内容が濃く、胸に何かが残るような作品になっているぞ。
感想
デビュー作の「13階段」とはまた違った作風の一冊でした。
13階段は「死刑制度」を扱った重いテーマに対して、今作は「未来予知」という全く異なった作品。
どんな作品になっているんだろう、と期待して本書を取ったのですが、全く想像していた作品とは違っていました。
「6時間後に君は死ぬ」というタイトルだから、予知と殺人事件を絡めた、おどろおどろしい展開を予想していたのですが、とても優しい物語が収録されていました。
5編+エピローグが収録されているのですが、全編を共通しているのが、どれも女性を主人公にしていて、「現在」を悩み、苦しんでいる。
そんな女性たちが「現在」をどうやって乗り切るのか。
どうやって「未来」に希望を持つのか?
と、苦悩して自分なりの「回答」を見つけ出す話になっていました。
・6時間後に君は死ぬ
・時の魔法使い
・恋をしてはいけない日
・ドールハウスのダンサー
・3時間後に僕は死ぬ
以上、5編がメインになっていますが、どの作品でも「予知能力」を持つ、「圭史」が糸のように存在していて、重要な役割を持っています。
一番好きなは話は「ドールハウスのダンサー」でした。
ダンサーを夢見てルームメイトと共に、ダンサーの選考を受ける主人公。
しかし、現実は厳しい。
アルバイトで生計を立てつつ、ダンスのレッスンを受ける。両親からは「結婚」だの「歳」だと、仄めかされる。そして試験を受けるものの、落選の日々が続く……。しんどいですね。
そんな折に、彼女はデジャヴを見る。
同じ試験を受けたルームメイトだけが、試験に合格するのだ。
だが、試験前にそのルームメイトは足を捻挫してしまう。
ここで、ルームメイトを助ければ彼女だけが合格してしまう。しかし、ルームメイトを見捨てれば自分が合格するのではないか? という葛藤が主人公を支配していくのです。
自分の心を汚してまで、その夢に価値はあるのだろうか?
努力が報われないこともある。成功だけがすべてじゃない。時に諦めることで、別の幸せがある。そう教えてくれた小説でもありました。
「明日は、きっといい日だよ。」
13階段とは全く違った作品になっていて驚きました!
作者の引き出しにびっくりです。
こんな人におススメです
・SF(?)推理小説を読みたい人。
・連作短編集を読みたい人。
・タイムリミット・サスペンス小説を読みたい人。
・未来について不安を持っている人。