な、なんて悲しい物語なんだ……。
にわとり助手よ。君はちゃんとモラルを守って生活しているか?
え、モラルですか?
う~ん。正直に胸を張って「守っている」とは言えないですね……。
そう!
この作品は、そんな人々が少なからず破っている「モラル」をテーマにしているのだ。
昨今はの社会は「モラル」に厳しいですからね……。
概要
地方都市に住む幼児が、ある事故に巻き込まれる。原因の真相を追う新聞記者の父親が突き止めたのは、誰にでも心当たりのある、小さな罪の連鎖だった。決して法では裁けない「殺人」に、残された家族は沈黙するしかないのか?第63回日本推理作家協会賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
個人的ポイント
登 場 人 物 : たくさん登場人物がいるが、ちゃんと書き分けているので、分かりやすい。
文 章 力 : 圧倒的に上手い。読みやすい。
テ ー マ : 誰でも経験がある些細な出来事。
ト リ ッ ク : トリックというよりも、読ませ方。
後 読 感 : 自分の行動を振り返るきっかけとなった一冊です。
とても切ない作品。
自分の胸にザクッと刺さるモノがあったぞ。今一度自分の胸に手を当ててみよう。
感想
ミステリ、というよりもサスペンスに近い作品でした。
ゴミの分別をしなかったことは? 仕事をサボったことは? 信号無視をしたことは? 時間を守らなかったことは? 歩きスマホをしたことは? 自転車のルールを無視したことは?
誰にでも、一度くらい経験がある悪意のない、些細な「社会のルール違反」
人は聖人君子ではないので、「ちょっとぐらい」「誰でもやってる」「まぁ、いいか」とモラルに反する。
しかし、その裏で誰かに迷惑を掛けている事を忘れてはいけない。
そんな小さなルール違反が重なるれば、2歳の小さな命を奪ってしまうこともある。
この小説はそんな誰でもやったことのある「ちょっとしたルール違反」をテーマにしている傑作だと思いました。
責任転嫁、責任逃避、保身の気持ち。
一言でもいい謝って欲しい。でも、人の命が無くなった問題であるため、素直に謝罪できない。そんな微妙な人の気持ちがとても上手に描かれていました。
現にあなたは、小さなルール違反を犯して、「お前の所為で人が死んだ」と咎められて素直に謝ることができるでしょうか?
そして、主人公は自分の息子の命が奪われた理由を探っていくのですが、自分自身もモラルに反していた事、身勝手な事をしていた事に気が付いて、彼は慟哭する。
自分も、息子の命を奪っていた1人だったのだ、と。
登場人物たちを責められない。自分たちも小さな「罪」を犯していて決して潔白とはいえないのだ。
改めて、恥じぬような行動をしたい、と思った一冊でした。
ああ、悲しい……。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ように小さな罪が重なって1人の命が奪われるとは……。
こんな人におススメです
・日本推理作家協会賞に興味がある人。
・重厚な物語を読みたい人。
・自分の行動を振り返りたい人。
・法律では裁けない、罪を読みたい人。